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「・・・、」 「あっ!気がついた?」 「・・あれ・・・」 目を開けたらそこに、アグモンがいた。 「・・・アグモン・・?」 「うん、そうだよぉ。よかった!だってってば、死んでるみたいに眠ってたんだよ。」 「・・・ここ・・」 重い身体をのっそりと起こす。 今までどうしてたんだっけ。 おぼろげな記憶と、働かない頭。 アグモンは後ろを振り返って叫んだ。 「太一!トコモーン!が目を覚ましたよー!」 また妙な組み合わせだな、と思いながらそちらを見てみる。 ぴょこんと姿を現した太一とトコモン。 「ー!!」 「グフォッ」 トコモンが鳩尾にタックルしてきた。三途の川がチラっと見えた。 「おっ、目ぇ覚ましたか!」 「太一・・・」 おなかにすり寄ってくるトコモンをなでなでしながら、両手に果物を持った太一を見上げる。 「トコモンが気絶してるおまえを見つけたんだってさ。」 「そうなの?」 「うん。森のなかでたおれてたんだ。でもぼくだけじゃ運べなかったから・・」 「ぼくたちもついさっきトコモンと会ったばっかりなんだ。いっしょにここまで運んできたんだよ。」 「そ、それはまことかたじけない・・・」 そばには湖がある。 木陰もちょうどいいところで、休むにはもってこいの場所だった。 ああなんていい子たち。・・うん?いや待てよ。 運んだってどうやって? まさか引きずっ・・・ 「・・・・・・・」 「うん?」 「どーしたの?」 「・・ううん、なんでもない。」 私の本能が聞いてはいけないとサイレンを鳴らしている。 背中の布が薄くなっていませんように。汚れてるだけなら許すから。 「それより、ほかのみんなは・・?」 妙な組み合わせで違和感ありまくりだ。3人に問いかければ、トコモンが目に見えてしゅんとした。 「が起きたら、トコモンが話してくれるって言ってたんだ。な、トコモン。」 「うん・・・」 「え・・?太一も知らないの?」 「ぼくたち、太一たちの世界に行ってたんだよ!オダイバ!」 「お台場!?」 「おう。エテモンを倒したときに、次元の歪みに入っちまったみたいでさ。ちょっとだけもとの世界に帰ってたんだ。」 「そ・・そうなんだ・・・」 ほい、とアグモンから蛍光緑色をした果物を受け取る。・・正直食欲はわかないが、腹は減っているのでとりあえず食べる。 ぱきんと半分に割れたので、片割れを膝の上のトコモンに差し出すと一口で食べた。 ・・・なんだろうこの口を開けた時とそうでないときのギャップ。まあかわいいから許す。 「太一とアグモン、それからがいなくなって、ぼくたち・・・」 ぽつりぽつりと話し始めるトコモン。 しゃりしゃりと果物をかじる太一とアグモンと私。 「空とピヨモンが太一たちをさがしに行くっていって・・それからみんなひとりずついなくなっちゃった。」 「(みんな大胆なことするなぁ・・・)」 もしもし。しょりしょり。むぐむぐ。 「さいごまでのこったのは、ぼくとタケルと、ヤマトとガブモンだけ・・・」 それからヤマトとガブモンは様子を見に行くと言って海の向こうに渡っていった。スワンボートで。 ・・なんて原始的で肉体的な。すばらしい。 しかしすぐ帰って来ると言ったはずのふたりはいつになっても帰ってこなかった。 とうとうガマンの限界に到達したタケルが泣き出したとき、現れたのがピコデビモン。 そしてそのピコデビモンからヤマトの様子を聞かされたタケルとトコモン。 と、ここで問題が発生。 ヤマトが「タケルなんてだいっきらいだ!」と言ったらしい。 「超がつくほどブラコンのあいつが?」 「「・・・・・・」」 「ありえない・・・天地がひっくり返っても、たとえデビモンが爽やかな笑顔で微笑んだとしても絶対ありあえない・・・」 「「おぇええ」」 「(想像したのか・・・)」 「ぼくもそう思ったんだ・・・」 しかし精神的にも参ってたタケルは真に受けてしまい、ひどく気持ちが揺らいだという。 そこでトコモンがひとりでピコデビモンに抗議したが、確かな証拠もなく断定的な言い方をしたということでタケルと喧嘩したらしい。 結果、タケルはデジヴァイスと紋章を捨てて、ピコデビモンと遊園地へ行ったという。 「ふうん、それでトコモンがひとりぼっちになってたの。」 「うん・・・」 「ヤマトも心配だが、まずはタケルだな。」 未だ膝の上にいるトコモンをぽんぽんとなでてやる。 トコモンはその大きなくりくりおめめをうるうるしながらむぎゅうと抱きついてきた。よしよしお姉さんの胸で存分に泣きなさい。 「胸ないけどな。」 「うるせえ小学生なのにボインであってたまるか。」 そんなのは二次元で十分だ。 「トコモン、タケルのいる遊園地へ案内してくれ。」 「うん。」 トコモンは私の膝からぴょんと飛び降りた。私もよっこいしょと立ち上がる。 おっとっと、立ちくらみ。 「、だいじょうぶ?」 そばにいたアグモンがそっと覗き込んできた。私はにっこりと笑う。 「うん、大丈夫だよ。」 「むりしないでね。」 きゅーん。 「心配してくれてありがとぉおお。アグモン大好きぃいい。」 「えへへ!」 むぎゅーとアグモンと熱い抱擁を交わす。 アグモンはもふもふしてないけど、このかたくもなくやわらかくもなく、絶妙な恐竜肌がたまらんのだよ!アグモンあったかいし! 「おら行くぞおまえら。」 「太一君痛いです。」 「うるさい。」 しかし八神太一氏の邪魔が入り私たちの愛は引き裂かれたのだ・・!許すまじ太一! ずるずると引きずられながら遊園地へと歩く私たち。 「・・あそこだな。」 森の木の向こうに観覧車が見えたところで、太一が襟首を掴んでいた手を離した。 「タケル、今会いに行くからね・・!」 「あっ、ちょ、おい!?」 太一をほっぽってクラウチングスタートでダッシュする私。 みんなと長いこと会ってない気がする。 会いたい。 なんだかすごく、みんなに会いたい。 「、反対だって!」 「逆逆〜!」 「先に言って・・!」 スピード出したら急には止まれないのですよ。 遊園地に着くと、タケルはすぐに見つかった。 「ターケールー!!」 休憩所のテーブルに突っ伏したタケルが、ぱっと顔を上げた。 「た・・太一さん!さん!」 「「タケル!」」 「生きてたの!」 「死んでたまるかよ!」 「タケルを置いて死ぬわけないでしょ!」 正義のヒーローもびっくりなキラキラスマイルを浮かべれば、タケルはこちらに一目散に走ってきた。 そして私の胸へ、タケルくんいざダイブ!! 「生きててよかった!心配したんだよ、ぼく、とっても心配したんだからぁ・・!」 「カッハー!!」 「ウワッ、鼻血、はなぢー!!」 泣くタケルをよしよしとあやしていると、トコモンがアグモンの頭からぴょこんと飛び降りた。 「トコモンも戻ってきたの?」 「うん。」 「わかってくれたんだね!自分が悪いことしたって。」 「悪いことなんてしてないもん!」 「トコモン!いつからきみはそんなふうになっちゃったの!?」 「ま、まぁまぁ・・」 未だ険悪なムードな二人の間に、太一が割って入った。 「話はトコモンから聞いたけど、今は内輪もめなんかしてる場合じゃないだろ?」 「そうそう。まずは、みんなを探しに行かないと。」 「やだ!」 私たちの提案に、タケルはぷいっとそっぽを向いた。 「どうして?」 「みんな、ぼくをおいてった。はじめは空さん・・それから・・それから、さいごはお兄ちゃんまで・・!」 「なにか、訳があったんだよ。」 「ちがう!みんな、ぼくがキライなんだ!すぐ泣くから・・子供だから・・!」 思わず瞳を潤ませながら震えるタケル。 居た堪れなくなってぐしゃぐしゃと頭を撫でてやる。 「ピコデビモンって奴がなんて言ったか知らないけど、ヤマトがお前を嫌うはずないじゃないか!」 「でもお兄ちゃん、ぼくと太一さんがなかよくしてたらそばでヤな顔してたし、太一さんを探しに行こうって言ったときも反対した。」 おいこらヤマト一発殴らせろ タケルは全部気付いてるぞバカヤマト! 「・・こわいよ・・・」 「目を合わせたらダメだトコモン、死んじゃうよ・・」 「ぼくが太一さんのことばかり言うんで、それでキライになったんだ!」 「えぇえ・・・」 「ねえ太一さん、ぼくを太一さんの弟にして!」 「え、いや・・・それは、ちょっ「許さーん!!断固許さーーん!!!」 キーン、とあまりにも大きな声を出したので、自分の耳までぐわんぐわんした。 が、この際それは問題ではない! 「あのねタケル、それはヤキモチというんだよ。」 「やきもち・・?」 「そう・・タケルを太一にとられたから、ヤマトは悔しかったのさ。」 「でも・・・」 「と、とにかく!ヤマトを探して、本人から訳を聞いてみようよ。」 「私もそれが一番いいと思う。大丈夫、理由を聞いたあとおねえちゃんがタコ殴りにしてやっから。」 「わーかっこいー」 「素晴らしく棒読みだなアグモン。」 なんとかタケルをなだめた直後、空から羽ばたく音が聞こえてきて全員が顔を上げた。 「あ、ピコデビモンが帰ってきた!」 「あいつか・・・」 一等身に翼が生えた黒い生物、それがピコデビモン。見るからに悪役な顔してる。 「やあトコモン、元気だった?」 「やい、おまえに聞きたいことがある。」 「な、なんですかアナタたち!」 「ぼくは太一。こいつはアグモン。」 「私は。」 「ヤマトがなんて言ったって?」 太一よりも私よりも先に、ピコデビモンにじろりと詰め寄るアグモン。 「ヤマトはですねぇ・・もうタケルと一緒にいたくないってそう言ってました。」 ピコデビモンは逃げるように地面から離れ、空中からこちらを見下ろしている。 「いえぼくもね、兄弟だからそれはないだろうって説得してはみたんですが・・・ヤマトは聞いてくれなくて。」 「ほんとか!?」 「ウソは言いません!」 「ヤマトのいるところに案内してくれないか?」 「いいですよ。でもちょっと遠いです。」 「遠くても構わない!」 「地の果てまで追いかけてタコ殴る。」 「「「「「・・・・・・・・」」」」」 「・・・そうですか、・・あ、そうだ!その前にゴハンにしません?」 「「ご・・ごはん・・・」」 「たべたい・・・」 「そうするか。」 「意思よえぇえええ!!お前ら弱ぇえぇえええ!!」 「さあおいしいキノコです、どうぞ遠慮なく!」 ピコデビモンが持っていた籠の中には、何故か大量のキノコ。 アグモンが嬉しそうに手を伸ばすが、それを太一が止めた。 「待て!焼いたほうがうまいぞ!」 ということでキノコを焼くことに。 「うわぁ、おいしそうなにおい!」 やたら用意周到なピコデビモンからなぜか七輪を受け取り、キノコ加熱中。 「まだ焼けてないだろ〜。」 「あ、待ってて!ぼくちょっとトイレ行ってくる!」 「あ、私も。」 「早くしないと、みーんな食べちゃうぞー!」 アグモンと一緒にお手洗いに向かうことにした私。太一の意地悪い声が後ろで聞こえた。 「あれ、こんなとこにもおんなじキノコが!」 「え、うわ・・ほんとだ!」 トイレの標識の真下に植えてある、紛れもないあのキノコ。 アグモンと目が合い、不審に思いながらも先にお互い用を済ませた。 「・・さすがにトイレの近くに生えてるキノコと同じキノコを食べようとは思えない。・・そうは思わないかい、アグモンくん。」 「う〜ん・・ほんとに食えるのかなぁ?」 アグモンがキノコをひとつ摘み取る。 『食べちゃダメ!そのキノコを食べると、今までの記憶をすべて失うの!』 そして聞こえてきた天からの声。 「だれ・・?」 これぞアニメクオリティ。 さすが子供向け番組。突っ込みたいけど突っ込みきれないこのもどかしさプライスレス!! 「(・・今の声は、)」 「き、き、聞いた!?今の話・・・」 「うん、・・そうだね、もし本当だったら・・・」 「た、太一が大変だ!!」 「急ごう、アグモン!」 慌てて走り出す私とアグモン。 振り返ってみたが、そこに人影は見えなかった。 それより、一刻も早くあのキノコを排除せねば。 「よし、これでよし!」 「ありがとう太一さん!」 タケルと太一の姿が見えた途端に嫌な予感。 あああ!!今まさに、そのキノコがタケルの口の中へ・・・ 「食べちゃだめぇぇええええ!」 「そのキノコ食べちゃだめぇぇえええ!」 「慌てるなって、おまえらの分はちゃーんと残してある。」 「食べちゃだめなんだってぇ!」 アグモンはタケルがくわえていたキノコを強引に引っ張り出し、私は太一の手のキノコをべしっと払いのけた。 「なんだよ!」 そして私とアグモンはくるりとピコデビモンを振り返り、こう言う。 「ピコデビモン君、きみ、味見はしたのかな?」 「さあ食えピコデビモン!」 「見ず知らずの他人に見ず知らずのものを食べさせるんならそりゃぁ・・・目の前で毒見してもらわないとねぇ?」 そしてアグモンはピコデビモンにそのキノコをばしんと投げつけた!すげえ、荒っぽいっすアグモンさん! 「食べられるはずないさ!それを食べたら記憶がぜーんぶなくなっちゃうんだからな!」 「うそ!?」 「ほんとなの、ピコデビモン!」 「そ、それは・・!」 「ヤマトのことも、ウソなんだろー!?」 「は、はい・・!」 追い討ちとばかりにトコモンが威嚇をし、ついにピコデビモンが白状する。 ピコデビモンはたじたじになってふらふらと飛び回り、やがてその足を私が掴む。 そして頭を逆さにする、いわゆる丸焼き持ち。 「ひどい!ひどいよ!!」 事実を知ったタケルはぼろぼろと泣きながらトコモンへ駆け寄る。 「ごめんねトコモン、ぼく、きみのこと・・・」 「わかってる、きにしないで!」 「トコモン!」 「タケルー!」 そして抱き合う感動の二人・・!青春だね! 「どうやら、誤解も解けたみたいだな。ほら、お前のだ。」 「ありがとう!」 太一が、持っていたデジヴァイスと紋章をタケルに返してやる。 すると、なにやら紋章が光り始めた。 おやこの感覚はもしや、と思った次の瞬間、 がぶり。 「いっ・・・・だーーーーーー!!」 ピコデビモンが思いっきり私の手を噛む。 そのスキにピコデビモンが私の手をすり抜け、タケルとトコモンへ迫る。 「それじゃあ俺が困るんだよ!そいつをよこせぇ!!」 威嚇したトコモンが地面へと降りる。 いよいよこれは、ああそうか。見せ場ってやつだね! しかし私がこれで黙っているわけがなかろう。 「タケルはぼくが守r・・・ 「お返しじゃぼけぇぇえええい!!」 どげしっ 「はうッ!?」 「えっ」 「えっ」 「スゲー、のとび蹴りが決まったー!!」 「ピコデビモンが吹っ飛んだー!!」 「・・トコモン、進化しないの?」 「ト・・トコモン進化・・・」 え、なに?空気読めって? 空気?なにそれおいしいの? トコモンが無事にパタモンに進化し、アグモンがピコデビモンへベビーフレイムを直撃。 反撃とばかりにピコデビモンはピコダーツをお見舞いしてくる。 なんかヤバそうな薬の入った注射器を投げてくるという迷惑極まりない攻撃だ。 というわけでとりあえず逃げます! なんとか安全な場所に逃げ切ったあと、ハラハラしながらピコデビモンとパタモンの行方を見守る。 一時はどうなることかと思ったが、なんとかパタモンはピコデビモンをリングアウトさせた。 つまりは一件落着ってことさ! 「パタモン!ありがとう!」 戦いを終えて戻ってきたパタモンへ、タケルが真っ先に駆け寄った。 「いままでのこと、ほんとうにごめんね・・・」 「もういいって!ぼくもまた、タケルのおかげで進化できたんだし、またなかよくやっていこ!」 「うん、あと、お兄ちゃんにもあやまらなきゃ。」 「そうだね!」 キャッキャウフフ。 なんとかわいいツーショット・・じゅるり・・「ヒロインにあるまじきヨダレ描写!!」 「・・しばらく、そっとしとこうか。」 「うん!」 「それにしてもお手柄だったぞアグモン!よくあのキノコの正体を見破ったなぁ!」 「いや、声がしたんだ。」 「だれの?」 「さあ?」 太一が次に私のほうを見たので、曖昧に肩をすくめてみせた。 * * * 「俺にもよくわからないんだが、この世界のゆがみが、現実世界にも影響を及ぼしている。」 いつの間にか日が暮れ、辺りは既にオレンジ色に染まっていた。 「だから、もとの世界に戻る前に、この世界のゆがみをなんとかしなきゃならない。」 「そのためには、みんなの力が必要だってことだね?」 真面目な太一に、私も真面目に答える。 「そ。タケルの力もだ!」 「うん、ぼく、がんばるよ!」 「その意気だ!じゃあ、ほかのみんなを探しに行こう!」 「「「うん!!」」」 「それと、他の人からもらったキノコは絶対に食べちゃだめだぞ☆」 「「「はーい!」」」 「よいお返事!」 こうして、また私たちのデジタルワールドの旅が再開する。 みんな、待っててね。すぐに迎えに行くよ。 NEXT 後書き またまたみんなが離れ離れになってしまうので、主人公が誰と一緒に行くか悩みますね・・・ とりあえずは太一とタケルと共に行動です! 次回から合流していきます。 |