
Episodio 1

ただ、外の空気を吸いたかっただけ。
そう。
それだけ。
でも…
それが迷路の入り口だなんて。
今の僕には知る由もなかった。
第一話
incontro
書類に埋もれ
椅子に座り続けるのはもう限界で。
学ランを羽織って外に出した。
もちろん僕を止めれるモノは何もない。
血の匂いがするのが普通。
そんな日常には新鮮すぎる水の匂いがするまで歩き続けた。
川原まで。
春になれば花が咲き乱れる。
高層ビルが空を隠すが、ある一部の場所なら景色を邪魔する物は何もなかった。
僕は其処を知っている。
その場所を。
というより、僕しか知らないだろう。
この並盛を一番に知っている僕にしか。
「………。」
なのに。
誰も居ないはずなのに。
今日は先客が居たようだ。
「……咬み殺そう。」
縄張りを荒らされたんだ。
それぐらい当然の事。
誰の縄張りか教えてあげよう。
そして、二度と来れない様にしよう。
「そこの草食動物。何してるの?」
振り向いたのは
空色の髪をした男。
大の字になって寝転んでいる。
彼の隣には倒れた車椅子。
彼の腕には軽い擦り傷。
……横転したんだろうか。
「空…綺麗。」
「え…?」
軽く自分の思考の中に居た僕は、思わず聞き返してしまった。
顔は光で上手く見えない。
こっちを向いたその顔は
僕の頭の中に焼き付いた。
「貴方……誰?」
「お前、並盛生か。」
話が噛合わない。
「人の話聞いてるの?」
「助けてくれ。」
手招きをされる。
きっと、このまま話を続けても拉致があかないだろう。
仕方がない。
そう言い聞かして、足を動かした。
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「こんな所で何してたの。」
「待ってたんだ。助っ人を。」
彼は車椅子に乗せてくれと頼んできた。
足が悪いのだと。
この辺をブラブラしていたら、この場所に目を奪われたらしい。
ふらふらと川の近くに来た時、車輪に草が絡まって横転。
こけた車椅子を元に戻せなくて乗るのを諦めた。
人が来たら助けてもらおう。
と。
でも、此処に人が来る筈なくて。
ずっと、空を見ながら退屈しのぎをしていた。
雲を眺めてると時間も早く流れる。
なんて言いながら、彼は笑った。
「助かった…えっと………並盛生?」
「恭弥。」
名前なんて教えてあげるつもり、全然なかったけど。
でも、なんとなく言ってみたくなった。
呼んでもらいたくなった。
「恭弥…良い名前だ。」
笑顔。
凄く綺麗。
「貴方は?」
「俺?俺は。。」
「…。」
の碧い髪が、風に弄ばれている。
それを見ながら
「凄く…良い名前。」
なんて、僕らしくもない言葉が口から零れた。